じゃあ、減価償却の計算は実際にどうやるの?
今回は、減価償却の計算について、以下のように解説をしていきます。
〇減価償却費の計算方法
〇定額法の計算方法
〇改正定率法の計算方法
〇定率法の計算方法
〇旧定額法・旧定率法の計算方法
〇5年間の均等償却の計算方法
減価償却費の計算方法
減価償却費は、「減価償却資産の償却方法」の項で解説した通り、定額法、改正定率法、定率法、旧定額法、旧定率法に分かれて計算方法が変わってきます。
なお、年の途中で減価償却資産の取得または廃棄をしたときは、その年の使用期間が1年に満ちません。この場合、1年分の減価償却費を12で割って、業務に使用した月数(1月未満の場合は1月に切り上げます)を掛けて求めた金額がその年の減価償却費となります。
また、その年の減価償却費の金額に事業専用割合をかけて必要経費算入額を求めます。
減価償却後の資産の未償却残高(期末残高)は、償却前の残存価額(取得した年は取得金額、2年目以後は前年の未償却残高)からその年の減価償却費の金額(家事関連費の按分前の金額)を差し引いた金額になります。
定額法の計算方法
平成24年4月1日以後に取得した減価償却資産、平成19年4月1日~平成24年3月31日までに取得した減価償却資産に適用します。
定額法の計算方法 |
取得価額 × 定額法償却率 = その年分の減価償却費 |
≪定額法の計算例≫
令和4年7月に電気冷蔵庫を購入し、同月から業務に使用している。取得価額100万円、耐用年数6年、定額法による償却率0.167。
償却年 | 償却費の計算過程 | 年末の償却残高 |
1年目 | 1,000,000①×0.167×6/12=83,500円②(←この年の減価償却費) ※使用開始月の7月から年末までの6か月間を計算します。 | ①ー②=916,500円③ |
2年目 | 1,000,000×0.167=167,000円④(←この年の減価償却費) | ③ー④=749,500円⑤ |
3~5年目 | 2年目と同じ | 毎年④を引く 3年目 582,500円 4年目 415,500円 5年目 248,500円⑥ |
6年目 | 1,000,000×0.167=167,000円④(←この年の減価償却費) | ⑥ー④=81,500円 |
7年目 | 81,500円ー1=81,499円(←この年の減価償却費) ※前年末の未償却残高81,500円が前年の減価償却費167,000円より少ないので、前年末の未償却残高81,500円から1円を引いた金額をその年の減価償却費の金額とします。 | 1円 |
改正定率法の計算方法
平成24年4月1日以後に取得した減価償却資産に適用します。
改正定率法の計算方法 |
ステップ1 次の①と②を計算します。 ①前年末の未償却残高×定率法償却率=調整前償却額 ②取得価額×保証率=償却保証額 ※前年末の未償却残高は、前年の減価償却費を前々年の年末の未償却残高から差し引いた金額です。取得した年の前年末の未償却残高は、取得価額とします。 |
ステップ2 ①と②を比較します。 ①≧②の年 → ①の金額=その年分の減価償却費 ①<②の年 → 改定取得金額×改定償却率=その年分の減価償却費 ※改定取得金額は、①<②の最初の年だけが前年末の未償却残高、次の年以後は前年の改定取得価額になります。 |
≪改定定率法の計算例≫
令和4年7月に電気冷蔵庫を購入し、同月から業務に使用している。取得価額100万円、耐用年数6年、改正定率法による償却率0.333、改定償却率0.334、保証率0.09911。②の償却保証額は99,110円(取得金額1,000,000円×保証率0.09911)
償却年 | 償却費の計算過程(太字がその年の減価償却費) | 年末の未償却残高 |
1年目 | 1,000,000×0.333×6/12=166,500円(①≧②の年) ※使用開始月の7月から12月までの6か月を月割計算 | 833,500円 |
2年目 | 833,500×0.333=277,556円①(①≧②の年) ※計算過程の円未満は四捨五入 | 555,944円 |
3年目 | 555,944×0.333=185,129円①(①≧②の年) | 370,815円 |
4年目 | 370,815×0.333=123,481円①(①≧②の年) | 247,334円 |
5年目 | 247,344×0.333=82,362円①(①<②の年) ※(①<②の年)は、改定取得額に改定償却率(0.334)を乗じた金額が減価償却費になります。前年は(①≧②の年)でしたので改定取得価額は前年末の未償却残高です。 247,334×0.334=82,610円 | 164,724円 |
6年目 | 164,724×0.333=54,853円(①<②の年) ※(①<②の年)は、改定取得額に改定償却率(0.334)を乗じた金額が減価償却費になります。前年は(①<②の年)でしたので改定取得価額は前年の法定取得価額です。 247,334×0.334=82,610円 | 82,114円 |
7年目 | 82,114×0.333=27,344円①(①<②の年) ※(①<②の年)は、改定取得額に改定償却率(0.334)を乗じた金額が減価償却費になります。前年は(①<②の年)でしたので改定取得価額は前年末の未償却残高です。なお、改定取得価額に改定償却率(0.334)を乗じた金額が前年末の未償却残高より大きいので、前年の未償却残高から1円を差し引いた金額をその年の減価償却費にします。 82,114ー1=82,113円 | 1円 |
定率法の計算方法
平成19年4月1日~平成24年3月31日までに取得した減価償却資産に適用されます。
ちなみに、この期間の計算方法は定額法・定率法があります。
定率法の計算方法 |
定率法の計算方法は改正定率法の計算方法とおなじです。 ただし、定率法に使用される償却率、保証率、改定償却率は異なります。 |
旧定額法・旧定率法の計算方法
旧定額法または旧定率法により減価償却費の95%(言い換えると残存価額が5%)相当額まで減価償却費を計算します。取得価額の95%相当額まで償却した年の翌年以後は、5年経過後の残存価額(1円)を差し引いた金額を均等償却します。
旧定額法の計算方法 |
(取得価額ー残存価額)×旧定額法償却率=その年分の減価償却費 ※残存価額は、資産の種類によって定められています。 有形減価償却資産(坑道を除く)・・・取得価額の10%相当額 無形減価償却資産、ソフトウェア、鉱業権、坑道・・・ゼロ(残存価額なし) 生物(器具及び備品に該当するものを除く)・・・種類に応じて規定 ※旧定額法の償却率は、定額法とは異なります。 |
旧定率法の計算方法 |
前年末の未償却残高×旧定率法償却率=その年分の減価償却費 ※旧定率法の償却率は、定率法とは異なります。 |
5年間の均等償却の計算方法
旧定額・旧定率法での償却により、取得価額の95%までを償却したのちは、5年経過後の残存価額(1円)を差し引いた金額を均等償却します。
5年間の均等償却の計算方法 |
(前年末の未償却残高ー1円)÷5=その年から5年間の減価償却費 |
※前年末の未償却残高は取得額の5%相当額です。1円(5年経過後の残存価額)を差し引いた金額を5年で割った1%相当額が各年の減価償却費になります。 |
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