今年工場の建物とか機械の修理をしたんだけど、そのまま修繕費にあげようとしたら「それはできない」って税理士に言われたんだけど、どういうこと?
業務用の建物、機械、装置、器具及び備品などの資産のために支出した、要するに修理や補修、増築や機能拡張などのために支出した費用は、修繕費と資本的支出に分けて取り扱います。
今回は、その修繕費と資本的支出について解説をしていきます。
〇修繕費と資本的支出とは
〇修繕費と資本的支出の取り扱いの違い
〇修繕費と資本的支出の判断基準
修繕費と資本的支出とは
修繕費とは、その名の通り、資産を修理して、今までの現状に回復するための費用のことを言います。例えば、雨漏りがする屋根を補修した、モーターが壊れた機械を性能の同じ新しいモーターに付け替える、といった修理のように、いままでと全く同じ用途になるような修理に出費した費用のことです。
資本的支出とは、資産の修理等において、今までの現状よりもよりよく改良した部分の出費のことを言います。例えば、階段の修理に新たに手すりを設置した、床の修繕の時に新たに滑り止めを設置した、壁の修理に新たに耐久性の高い材料を使用した、など、いままでより利便化する、耐用年数が長くなるようにした部分の出費のことをいいます。
資本的支出には、修理のついでに行われることが多いので、すべて修繕費に算入してしまいがちですが、これらを分けておかないと、所得の計算に大きな誤差が生じるので、必ず修繕費の部分と資本的支出の部分を分けておく必要があります。
修繕費と資本的支出の取り扱いの違い
業務用の建物、機械、装置、器具及び備品などの資産のために支出した費用は、以下の区分で取り扱います。
区分 | 支出の内容 | 取り扱い |
修繕費 | 〇資産の通常の維持管理または原状回復 | 支出した年の必要経費に算入 |
資本的支出 | 〇資産の使用可能期間を延長させる部分 〇資産の価値を増加させる部分 | あらたな減価償却資産の取得として減価償却 |
※業務用に借りた建物などを借主が修繕した場合の費用も、貸主に請求できないものは必要経費に算入可能です。
※平成19年3月31日以前に取得した減価償却資産に資本的支出を行った場合、資本的支出の金額をその資産の取得価額に加算できます。ただし、平成24年3月31日以前に取得して定率法を選定している減価償却資産に対し、同年4月1日以後に資本的支出を行った場合、資本的支出の金額をその資産の取得価額に加算できません。
※支出した費用が修繕費になるか、資本的支出になるかは、その内容で判断します。ただし、以下の選定基準(形式基準)による判断をすることも認められています。選定基準内の前年末取得価額とは、原則として前年12月31日に保有する固定資産の当初取得価額に、その固定資産についてすでに支出された資本的支出の金額を加算したものを言います。
修繕費と資本的支出の判断基準(形式基準)
支出した費用が修繕費になるか、資本的支出になるかは、その内容で判断します。ただし、以下の選定基準(形式基準)による判断をすることも認められています。一番右の欄の「はい」「いいえ」で決定していない場合は、どんどん下の条件が当てはまるかどうか見ていってください。
1つでもあてはまれば修繕費 | ||
修理や改良のためのもので、金額が20万円未満 | はい→修繕費 | |
おおむね3年以内の周期で行う修繕である | はい→修繕費 | |
当てはまらなければ修繕費 | ||
明らかに価値を高めたり、耐久性を高めたりするものである | はい→資本的支出 | |
かつ以下に当てはまれば修繕費 | ||
通常の維持管理のものである | はい→修繕費 | |
災害などで損害を受け、その現状を回復するためのものである | はい→修繕費 | |
金額は60万円未満、または前年末取得価額の10%以下である | はい→修繕費 | |
さらに分岐します | ||
災害に伴っての支出か | はい→A いいえ→B | |
A.割合区分を採用しているか | はい→C いいえ→D | |
C.70%相当額である | はい→資本的支出 | |
C.30%相当額である | はい→修繕費 | |
B.D.割合区分を採用しているか | はい→E いいえ→F | |
E.支出金額の30%または前年末取得価額の10%のいずれか少ない金額1⃣ | 1⃣修繕費 | |
E.支出金額から上の修繕費の1⃣を引いた金額 | 資本的支出 | |
最後は実質的に見て判断 | ||
F.実質的に資本的支出か | はい→資本的支出 いいえ→修繕費 |
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